コラム

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わらしべ学び帳vol.1|”つつむ”という日本のこころ

vol.01|”つつむ”という日本のこころ

懐石に息づく「つつむ」の所作

懐石料理には「つつむ」という所作がたびたび登場します。
竹の葉で寿司を包み、器の蓋で香りをとどめる。
それは料理をただ隠すためではなく、守り、整え、そして開いた瞬間のよろこびを生む工夫なのです。
ほんの少しの間をおいて「ほどく」ことで、香りや彩りが際立ち、料理の魅力がより鮮やかに立ち上がります。
懐石の場では、この小さな演出が食事全体の流れを豊かにし、一期一会のひとときを引き立てているのです。

暮らしの中にある「つつむ」

こうした所作は、特別な懐石料理の場だけに限りません。
「つつむ」の心は、皆さんの身近な食卓にも息づいています。
例えば、おにぎりを海苔で包むとき、
キャンディを小さな包みにくるむとき、
お弁当を風呂敷でくるむとき、
お正月のお餅を折形の和紙で包むとき…。
そこには、“食べる人を思う気持ち”や“手渡す楽しみ”が宿っていて、
もらったときの「ほどく楽しみ」を感じたことがあるのではないでしょうか。

想いを包む、日本のこころ

相手を思って包む。
その小さな気持ちが、料理をより豊かにしてくれます。
懐石料理で大切にしている所作は、普段の生活の中にも自然と溶け込んでいます。
何気ない場面にこそ、日本人らしい丁寧さや心配りが見えてくるもの。
わらしべの懐石では、その所作を料理やしつらえに込め、特別なひとときとして形にしました。
暮らしの中にある「つつむ」と、わらしべで味わう「つつむ」。
それぞれの場に応じた姿こそ、日本の文化の豊かさだと考えています。